犬は7歳を過ぎたらシニアの仲間入りと言われますが、人で例えるとまだ54歳と若いです。
そのため、愛犬の老化を実際に感じ始めるのはまだ先かもしれません。
では愛犬の老いに気づいた時、家族はどのようなことをやっておくと良いのでしょう?
今回は動物介護士の視点から、犬の老いに気づいたら行ってほしいことを5つご紹介します。
犬も老化によって筋肉が衰えたり骨が弱くなったりします。
今までのように体が動かせないことも増えていきます。
その結果、わずかな段差につまずく・家具にぶつかる・家電のコードに引っかかるなどで、ケガにつながるケースも珍しくありません。
愛犬の老いに気づいたら、まずは下記のポイントを参考に生活環境の見直しから始めましょう。
- ・家具を移動して犬の導線を広くする
- ・コードが犬の足元に出ないようにする
- ・段差にスロープを設置する
- ・壁や家具の角にタオルなどクッション材を巻く
愛犬にとって「危険」「不便」と感じる部分がポイントになります。
とくに階段はシニア犬が踏み外して転落事故に繋がりやすい危険な箇所です。
これまでは犬が自力で2階に上っていた家庭でも、シニア期はできるだけ犬の生活が1階で完結することが理想です。
トイレ・水飲み場など必要なものは1階に設置すること。
階段にペットゲートをつけて犬が自分だけで上らないようにしましょう。
ペット保険の必要性は飼い主さんによって考え方がさまざまです。
愛犬が若い頃から入っている家庭もあれば、生涯入らずに過ごす家庭も多いです。
ただ、犬は老化にともない体調を崩すことが増えます。
ペット保険に入っておくと、万一入院した場合も自己負担額が少なくて済むメリットがあります。
補償内容は会社やプランによって異なりますが、早めに入っておくことで入院・手術だけでなく通院にも適用されるケースも多いです。
私の経験談ですが、数年前に亡くなった愛犬はペット保険に入っていませんでした。
ところが亡くなる少し前に体調を崩して入院し、たった数日で10万円以上の支払いになったことがあります。
特に異常は見つからなかったため治療の必要はなかったのですが、もし手術になっていたらさらに高額になっていたでしょう。
そうした経験から、現在飼っている愛猫は7歳になる前にペット保険に加入しました。
若い頃は健康でしたが8歳を過ぎた頃からさまざまな不調が見つかるようになりました。
通院も増え、先日も結石除去の手術を行ったところです。
20万円以上する手術もペット保険適用のため半額で済んだので、「ペット保険に入っていて良かった」と心から感じています。
とはいえ、全ての家庭にペット保険が必要と言うわけではありません。
考え方や経済力はそれぞれ違います。
「保険料の分を貯金しておく」「手術代くらい難なく出せる」などの意見もあるでしょう。
ただ、愛犬の老いに気づいた時には「ペット保険の必要性」を考えてみてください。
シニア対象のプランも多いです。
診療費が高額になった時の支払いが心配な場合は「お守り」として加入してもいいかもしれません。
ちなみに、アニコム損保の「しにあタイプ」の場合は8歳以上であれば何歳でも加入可能です。(2024年9月現在)
診療費の70%保障と50%保障の2プランあり、どちらも通院は補償対象外です。
入院の場合は70%保障で1日最大14,000円(年20回まで)、50%保障で1日最大10,000円(年20回まで)が保障されます。
ちなみに保険会社の公式サイトで簡単見積りや資料請求ができます。
月額の保険料は犬種や年齢によって変わるので、愛犬はどんなプランでいくら費用が必要かシュミレーションしてみてください。
また、現在すでに加入している場合は補償内容を見直すことも重要です。
補償の対象外となる病気があったり、加入当時は良いと思っていた内容が今の状況と合わないケースも珍しくありません。
「入っているから大丈夫」と安心せずに、変更が必要な場合はなるべく早く対応しましょう。
7歳を過ぎても急激に食欲が落ちることはほとんどないため、今まで通りのフードを与えている家庭も多いでしょう。
ただ、見た目にはわかりませんが犬の内臓は着実に老いています。
そのため、これまで通りの食事では、上手く消化できなかったりカロリーや栄養過多につながることがあります。
犬の老いに気づいたら、成犬用フードからシニア用フードへ切り替えましょう。
シニア用フードは、愛犬の対象年齢に合ったもので高タンパク・低カロリーなものを選ぶのがポイントです。
なお、犬は穀物や油分の消化が得意ではないため、急にフードを変えると胃の負担となり下痢や嘔吐につながります。
切り替えの際は数日間かけて新しいフードを増やしつつ、これまでのフードを減らしてください。
さらに老化が進むと、噛む力や飲み込む力が弱くなります。
ドライフードが食べにくくなり、誤嚥事故につながる危険もあります。
噛みづらそうな場合は、フードと同量程度のお湯でふやかして様子をみましょう。
万一の事故を防ぐため、食事中は目を離さずに見守ってあげることも大切です。
老化に伴い、若い頃のような好奇心や遊びへの意欲が減っていく犬も珍しくありません。
「ゆっくりさせてあげよう」と愛犬との外出やコミュニケーションを減らすかもしれませんが、これには注意が必要です。
犬は11歳を過ぎた頃から徐々に脳の機能が低下していきます。
脳が働かず外部からの刺激も少ないと認知機能はますます低下することに‥。
「もう高齢だから」とのんびりさせすぎると、認知症の発症リスクが高まってしまうのです。
人と同様に犬の場合も、認知症は現在の医学では完治は不可能です。
一度発症すると進行を遅らせるしか道はありません。
愛犬が認知症になると生活が昼夜逆転する、コマンドやトイレが出来なくなるなど、家族にとっても大変なことが多いです。
愛犬の認知症のリスクを減らすには、次のことを心がけましょう。
- ・スキンシップを増やす
- ・外出の機会を減らさない
- ・新しいコマンドに挑戦させる
高齢になっても脳への刺激を増やすように意識してくださいね。
また、認知症予防には食生活の見直しも有効です。
ビタミンC・ビタミンE・βカロテンなどの抗酸化成分、青魚に多く含まれるEPAやDHAは認知症予防に効果的と言われています。
愛犬の食事に摂り入れたり、ご飯で補うのが難しい場合は犬用サプリメントを使って摂取しましょう。
外出時にペットシッターサービスを利用する家庭もあると思いますが、利用したことのない飼い主さんも一度検討してみてください。
愛犬がさらに歳を重ねて介護が必要になったとき、家族だけでは体力的・精神的な苦痛が増えることも考えられます。
大切な愛犬とはいえ、介護はとても壮絶です。
きれい事だけでは済まされない場合も多く、飼い主さんの体調やメンタルに支障を来たすこともあります。
介護はあくまでも「目的」ではなく、愛犬と家族が幸せに暮らすための「手段」です。
飼い主さんが辛いまま介護を行うのは、愛犬にとっても苦しいことです。
ときには家族以外の手を借りて、飼い主さんたちがリフレッシュする時間も確保しましょう。
ぜひ一度、シニア犬のお世話を行っているシッターサービスを探してみてください。
ペットホテルやペットシッターサービスは10歳以上はお断りしている所もあるので、あらかじめ確認しておくと安心です。
愛犬の老いに気づいたら行ってほしいことをご紹介しましたが、あくまでも一般的なものです。
ライフスタイルは家庭によって違うので、この他にもさまざまなケアが必要となる場合があります。
大切なのは「飼い主と愛犬がこれからも幸せに過ごすために何ができるか」です。
愛犬が不便に感じることや、飼い主さんが負担に感じることが発生したときは、家族で話し合い、必要な対処法を見つけましょう。